なんかのブログ

書きなぐりたい、この思い。

舞台『宮本武蔵(完全版)』観劇

 舞台『宮本武蔵(完全版)』を計9回観てきました(TRUMPが7回だったので記録更新)。

 そのざっくり感想です。書いて文字にしないと、惜しい気がするので。

 読むのが大変なのは私に文才がないからです。先に謝っておきます。

 ちなみに、何か発見があるような、そんな内容でもありませんのであしからず。

 話のあらすじは公式サイトとかでお願いします。ここでは説明しません。私の話が長いので。

 

 初日の感想は、重い。何が重いって、武蔵の人生が重い。何アイツ、何、どういう気持ちで人殺してんの?なんで?って、疑問がいっぱい沸いた。だってツル、可哀想、亀一郎も千代も、何この台風みたいな武蔵なんなの。ゆるいって何がだよ!!!

 もう前田さんに、というか山田裕貴に騙された感すごかった。面白コメディじゃないの?前半あんな笑ってたのになに石で、え?

 こんな感想ばっかりでした。あんまりにも重いのでじゃぱらーんして心の浄化作業。私あと8回観るんだけど、心、もつかな。本当に心配だった。この物語受け止めきれないんじゃないかって。山田裕貴の主演なのに、どうしようって、頭と心が追いつかない。

 でも求めていた斜め上を軽々と飛び越えられた感も凄くって、やっぱり山田裕貴すげえってなった。アンタその技量どこで身に付けたのって。それを感じさせてくれたからめっちゃ嬉しかった。頑張るよ、わたし頑張って観る。

 フォロワーさんと話をしながら確認作業。なんで武蔵はああいう行動に出たのか。それを探る為に土日で4回観劇。それでようやく話が見えてきて、武蔵やその他の登場人物の人間性が掴めた感じがした。

 話は本当に面白い。宮本武蔵がどういう侍だったのか、あの時代に生きた人たちはどんな人間だったか。それをゆるい会話で進めていく。そういう脚本。教訓があるわけではない。何か重要な設定があってそれを読み解いてくれっていう、そういう脚本でもない。謎解きや考察して深めていくっていうわけでもない。ただただリアルな、現実と地続きの「人間」がそこには描かれていて、観客は登場人物の姿や言動に、いつの間にか自分や知り合いという【現実】を重ねていく。台詞が日常感あふれすぎて、舞台の世界を現実から切り離せない。だから観る人によっては本当に辛い、心がえぐられるような、蓋をして隠しておいた過去を穿り返されたような、そういう感覚に陥る。いる、いるよねああいう人間。

 だから冷静に、なんとか現実と切り離して観ることができたのが5回目。場面転換の順番も覚える程だった。そして7回目にしてようやく気づく。あれ私なんでこの舞台みてるんだろう、そうだ、山田裕貴観に来ているんだった!!!!!!

 ほんと自分でもびっくりで、あまりにも舞台の世界について考えすぎてずっと宮本武蔵のことしか考えてなかったから目的を忘れてた。私が6000円払って遠征して来てる原動力は山田裕貴だよ、なのに山田裕貴として観れていなかった。宮本武蔵がどう生きたか、それしか観てなかったし考えられなかった。おいおいファンとしてどうなんだ、いや、それくらいあのお芝居が素晴らしくって、山田裕貴宮本武蔵を生きたって証だ、いい、これでいいんだ。

 山田裕貴すげえなって感覚を取り戻して8回目からは感謝しかなくって。だってこんな幸せな環境で芝居できてる山田裕貴、役者としてめっちゃ期待されてない?任されてない?なにこの最高の環境!役者として、業界に名を知らしめる絶好の機会じゃん!と。

 連日誰か(関係者、事務所の仲間、役者仲間などなど)が観に来てくれていて、山田裕貴の芝居観て笑って、面白かった、羨ましいとか悔しいとかそこに一緒にいたかったとか言われてる。山田裕貴を知らない人が、山田くん良いねえって言ってくれる。役者としてこれ以上の幸せないじゃん?いや、あるかもだけど、とりあえず幸せ!!!って、もう幸せしか言えない人物になってた。パンフレットの、舞台ができるまでの経緯がこんな事細かに書かれているのもすごくうれしい。

 今回観ていて、これ役者というか、舞台に携わる人に見て欲しいなって、すごく思った。無駄な会話も台詞も道具も音響も照明も衣装も、とにかく無駄なものが一切ない舞台。というか、いるものしか使ってない舞台。会話劇だからかもしれないけど、あれだけでよく世界観作れるなって。あと、台詞って、勝手に噛んだらいけないものというか、はっきりしっかり伝えるように言わなきゃ駄目って、そういう感覚が観客にも役者にも作られてるんだけど、そうじゃねえよと。生きて喋ってるだけだよ、みたいな。そういうやり取りを芝居で観るのが初めてだったからかもしれないけど物凄い衝撃で。今までの思い込みを的確に覆されたような感覚だった。「演劇」への視点ががらりとかわる、そんな作品だった。

 千穐楽は、もう幸せしか言えない人間になっていたのでとりあえず山田裕貴と前田さんに感謝の気持ちをアンケートに記した。芝居は最高だった。私が見た回はどれも最高だったけど、千穐楽山田裕貴が、ようやく宮本武蔵を笑顔で成仏させた感じがして、とても良かった。そして、胸にじんわりと安心感のようなあったかいものが残って、ああ、この芝居を知れて、9回も見ることができて本当に幸せだったと噛み締めた。山田裕貴に、こんなに長い間、こんなに素敵な役を生かさせてくれて、本当にありがとうと思った。同時に、終わるのが惜しい、もう一度あの武蔵に会いたいと、そう思わせてくれた。

 

 でした口調とである口調が混ざっているというか文章として成り立っていないのでこれがレポートなら再提出である。

 

 さて、ざっくりとした感想、というか思いの丈を書きなぐったので登場人物についても書き残します。過去にどっかで「舞台の感想を登場人物一人ひとりに書くやつうぜえ」みたいな文句を見たんですけど、うるせえ!だったら読むな!

 

宮本武蔵

 山田裕貴目当てで観に来たので大好きになるだろうと思ったら初日に石で殴られたような感覚に陥りしばらく受け入れられなかった。今は大好きです本当に。

 この人、本当に孤独というか、望まない孤独というか、本当はもっと「人並みの幸せ」をだた、生きたかっただけなんだなあって。武蔵の望む幸せを手にいれるには、生きてなきゃいけなかった。でも亀一郎を生かしておくと「かたき討ち」で殺されちゃう。亀一郎と千代が結ばれてからだと、亀一郎の敵として千代に殺されちゃう。小次郎はもともと決闘(どちらかが死ぬこと)を望むような奴だった。とにかく生きたい武蔵は殺すしかなかった。「殺すのは罪」という現代人には受け入れ難い人物かもしれない。でも武蔵は侍。いつも死が身近にあった。死は現実に起こりうる、ということを知っていた。一番侍らしい人なのに、ホントは友だちになりたいのに、仲良くしたいのに「狙われる」からできない。ただ衝動的に殺しているわけではないし、殺すのが好きなわけでもない。生きたい、という思いが武蔵に剣を握らせるのかなと思った。よくわかんない系のお母さんが良くわかる系のお母さんだったら、もっと早く伊織に会っていれば、ツルが、武蔵が変わるのを諦めなかったら、武蔵は寂しくなかったのかな、と思いました。

 宮本武蔵っていう看板に引き摺られて、自分が何者で何をしたいのかはっきりしない。自分は侍だし、武蔵だし、勝負で負けるなんて、馬鹿にされるなんて嫌だ。人から愛されたいし、愛したい。よし、ちゃんとツルと結ばれよう、幸せになろうと思って、ツルの元へ良かれと持って骨を持っていけば拒絶される……武蔵の行動って全部武蔵なりの正義というか、正解のつもりなんだよなあ。

 

佐々木小次郎

 ビジネスマン小次郎。武蔵からすると、侍として、そして人間として「甘い考え」の人物。だって侍なのに、命かけてないじゃんって武蔵的には受けれられない人物なんですかね。あとで書くけど狸吉も同様。腹黒いというか、物事を損得で考えてるので自分のためなら殺すと言われてしまうんだなあと。女将を殺すシーンは、武蔵に疑われて違うよ!と言っていて、あのシーンって小次郎も結局侍で、武蔵と同じように「殺したくないけど殺す」をしてしまうことを描いているんだろうなあと思ってます。なのに小次郎だと何故か悪くないと感じてしまうのは観客が女将とのやりとりを見ているせい?

 温泉のシーンで小次郎が責められる未来もあったのではと言われて確かに、と思いました。彼は周りと自分に一線を引いていて、他人はあくまで他人、利益があれば友だちになるけど……という感じ。

 

◎ナカイ亀一郎

 多分あのナカイだけどそれは置いておいて。

 よくいる優等生タイプというか、平和が好きな争いごと嫌いタイプかな。まずは相手を理解しようとする姿勢を見せる。吉岡一門って言わなければ武蔵と友だちになれたかもしれない……

 じゃあもうそれでいいんじゃないですか!!の怒号は、ここでこういっておかないと場が収まらないっていう亀一郎なりの対応だって、性格が亀一郎タイプだというフォロワーさんがおっしゃってました。自分のメンツを守る為とも。「貴殿といると殺されちゃうから」が地味にグサッとくる言葉。やめてそんな笑顔で言わないで武蔵のライフは0よ……

 

◎タハラ伊織

 お母さん伊織。武蔵の精神が安定していたのは伊織のおかげだろう。でもそれも前半まで。後半からは如実に伊織の欲が出はじめる。伊織としては武蔵の心の安定が最優先だったけど、でも「また山にずっと籠ろう」なんて言っちゃ駄目だったんだよ。武蔵はあくまで、人として、人間としての幸せを望んでて、孤独死したいわけじゃなかった。伊織は勿論、伊織以外の人間とも関わって生きたかった。なのに武蔵を世界から切り離すなんて、武蔵にとっては「社会的な死」であることに変わりなかった。元々二人は決闘していた間柄。仲良くすればいいでしょ、してみたけど伊織と武蔵は見ていた未来が違った。でも伊織だって人間だもの、欲ぐらいでるわよ……史実だと武蔵の養子なのかな?

 

◎ツル

 つぅ、ねえつぅ!

 切ない。切ない人。武蔵と出会って約束してしまったそのときから、ツルの未来は決まっていたのかな。でもツルの拒絶は、武蔵にとっては死刑宣告のようなもので、武蔵の幸せな夢を、生きてきた意味を全否定されたようなものだった。ツルの怒りはごもっともで、武蔵と関わらなけでれば自分の宿で殺人事件なんて起きなかったかもしれないし、狸吉が侍を目指して旅に出て、死んでしまう未来もなかったかもしれない。武蔵としては、亀一郎の死は当然の未来で、狸吉が死んだ直接の原因は自分の責任じゃないから、ツルに怒られる意味がわからない。ツルだって「夫がいるから武蔵とは一緒になれない」と、武蔵のスイッチを入れている。でもツルはなんであたしなの!ごもっともだけど、でも武蔵からするとなあ。

 結構ダメ男好き?

 好きって気持ちにそんな価値はないんだよ。だって皆好きなんだもん、誰かのこと。

 ツルが武蔵に浴びせる一言一言は武蔵にとって大事な言葉だったかもしれない。武蔵の思考回路がツルと同じだったら。

 

◎狸吉

 パーリーピーポー。武蔵が理解できない人その2。武蔵にとっては、自分が望む幸せを手に入れてる羨ましい奴。誰とでも仲良く、というかコミュニケーションが取れる人。そのうえ、武蔵が一番誇りにしてる剣を、鉈でやっちゃう「甘い考え」。ゆっくり試合は武蔵にとって本気じゃないのに勝手に終わらせて自信持っちゃってる。

 狸吉自体は根が優しい、ちょっとニートというか堕落人間。ようは武蔵と違って平和な微温湯で生きてきたような人。だから剣の道に来ちゃ駄目だったのに、小次郎というビジネスマンによりによって教えを乞うたから……

 

◎千代

 宮本武蔵に一番近かったかもしれない人物。目的のためには手段を択ばないあたり意外と冷酷な人?狐憑きの変わり者で宮本武蔵を唯一引かせた。亀一郎に掛ける言葉は全て優しくて、亀一郎にとってのよき理解者だったんだろうなあと。都合が悪くなると狐で誤魔化す辺り本当に憑りつかれてるの?とちょっと疑ってしまった。

 

◎山伏

 芋盗んだり宿で勝手に野宿したり千代に変態行為をはたらいたりと意外と変人。甥っ子亀一郎を見守っていて、いざというときは助けようとしていた甥っ子思いなおじちゃん。狸吉の気を引くために煽てるところとかみてると「山伏仲間」みたいに素朴で嘘をつかない人ではなさそう。

 

◎女将

 乱暴な言葉遣いで客を客とも思わない、一貫した態度。あたしはアンタたち侍のこと信用してないわよ!!!という態度を見ると昔侍になんかされたのかな?と思うほど。でも息子のことを思う姿は親ばかというか意外と甘い。息子を持つ親ってこんな感じなのかしら。不憫な子への責任からなのか……

 

◎村人

 まさかの前田さん。自分で書いた台詞でしょうが誘い笑いうまいなほんと。

 

 ここまで振り返っていて私、武蔵視点で人物考えてるわと気付きました。

 武蔵人生を思うと切ないですが、千穐楽で武蔵と伊織の笑顔が見られたので、今はとてもすっきりとした気分です。

 乱雑に書きなぐっただけですが、DVDも出ますし、11月にあの武蔵ともう一度会えることを楽しみにしています。

 今回本当に、この芝居を、山田裕貴を通して観ることができ、幸せでした。